農業者戸別所得補償法案の主な論点に関する衆議院農林水産委員会でのやり取り

1.本法案は、農産物の自由化を前提としたものではないのか?

・平成19年12月12日(自民党近藤基彦議員より)
・平成20年5月8日(自民党小里泰弘議員、近藤基彦議員より)

○法案は、WTOに関わる様々な農業協定、ガット・ウルグアイ・ラウンドの合意事項・枠組みを前提としている。

○自給率を上げ、農業に取り組んでいる方々を支援して、農業の振興、農山村の活性を図るべきというスタンス。

○自由化をするとはいっていない。守るべきは、守るという立場。交渉事なので、結果として関税が下がってきたという経過もある。そういった状況に対応するためにも、直接支払い、戸別所得補償が必要。

○WTOの枠組みは、各国の事情、状況を踏まえながら、必要なら根本的に考え直すことも必要。

2.食料自給率を高めるという際に、社会や食生活の変遷、農地の確保、品質、需要などの問題を考えているのか? 本法案における自給率向上の位置付けは?

・平成19年12月12日(自民党小里泰弘議員より) ・平成20年4月8日(民主党篠原孝議員より)
・平成20年5月8日(自民党赤澤亮正議員より)

○自給率の向上には、食生活の改善、基本的には輸入に依存している作物を国内で自給していくことが必要。

○需要の向上には、国内産麦等の育種、流通面での拡充、潜在的な需要に向けた生産体制の構築も大事。

○自給率を上げるため、輸入穀物を国内で作ろうとすれば、生産者と市場価格の差分を負担しなければならならず、コストがかかる。本法案の中は、1兆円という枠組みを設定し、コストを明示しながら自給率の向上への方策を示した。

3.発議者試算の位置付け、試算は党の公式見解なのか? 1兆円の積算根拠、財源は?

・平成19年12月12日(自民党小里泰弘議員より)
・平成20年5月8日(自民党古里泰弘議員、赤澤亮正議員より)

○試算は、党の公式見解ではない。考え方を分かりやすくするための数字。この数字の考え方は、法案提出者が責任を持って出しているもの。

○米については、過去3ケ年の全参入経費、生産費と農家の手取り価格の差額を全額補てんすることは必ずしも適切ではない。全参入経費の中で、自己地代あるいは自己資本利子というものは見なくてもいいのではないか。家族経費は8割という前提で試算した。

○所得補償については、全額所得補償しなければならないという前提には立っていない。本来得るべき農家の所得に対しての一定の補償ということも所得補償の中に入っている。

○現行の品目横断経営安定対策関連の予算約3600億円、また農林水産予算2兆7千億の1割程度を節約をして財源に充てる。残りの3千億から4千億は、国全体の予算の見直しの中で財源を生み出す。

4.想定される対象農産物については?

・平成19年12月12日(自民党小里泰弘議員、社民党菅野哲雄議員より)
・平成19年12月19日(自民党伊藤忠彦議員、赤澤亮正議員より)                   
・平成20年4月8日(民主党仲野博子議員、社民党菅野哲郎議員より)

○標準的な生産費と農家の販売価格に差があるものについて、一定の考え方基づき、所得補償を行う。

○米、麦、大豆、その他政令で定めるもの。例として、てん菜、でん粉用バレイショ、雑穀、菜種、飼料作物等も対象となり得る。

○本法案は、農作物を基本に考えており、畜産は対象外。

○野菜、果樹については、生産費と市場価格の差が恒常的に逆転している状況にないので、現在のところ発動される可能性はない。

○転作作物としての飼料米、ホールクロップサイレージについては、米並みの所得補償とは、若干違う検討が必要である。

5.販売農業者の定義は? また、対象農家の範囲は?

・平成19年12月12日(公明党西博義議員、社民党菅野哲雄議員より)
・平成19年12月19日(自民党江藤拓議員、赤澤亮正議員より)

○販売農家は、経営規模は原則として10アール以上、かつ、これに満たない場合であっても、市町村長が販売していると認めれば、販売農家として認めていいという考え方で進めている。

○全農家戸数の約6割、果樹、野菜等の面積を除いた面積が対象になり得ると想定すると、約6割の農地面積が候補となる。対象が農家戸数の3割、耕地面積の5割の品目横断的経営安定対策よりも対象範囲は拡大する。

6.「生産数量目標の設定」は生産調整そのものであって、民主党が生産調整を廃止する、米の強制減反を廃止するといってきたことに反するのではないか? また、生産数量の目標を決定、配分するプロセスは?

・平成19年12月12日(自民党小里泰弘議員、社民党菅野哲雄議員より)
・平成19年12月19日(自民党稲田朋美議員、伊藤忠彦議員、赤澤亮正議員、公明党井上義久議員より)

○生産調整が必要な米と、生産振興は必要な麦、大豆等々の作物を分けて考える必要がある。

○米の需給調整は不可欠である。

○民主党案は、計画にのっとって米を作る農家に所得補償するのであり、つくらないことに対して補填をする今までの政府の生産調整の考え方とは異なる。

○今までは、需給調整に参加する方としない方のメリットの差がなかった。民主党の直接支払いは、需給調整に参加する農家にメリットを与える。

○当該年度の米の需要を想定して、県ごと、市町村ごと、最後に農家に対して配分面積を配分する。自主的な調整を基本として、国、県、市町村がそこに加わる。

○生産振興を図る作物については、一定の単価を示して、農家の方々とコミュニケーションした後、具体的な数値を設定しながら、生産に取り組んで頂く。

7.日本の農業、農村の将来のあるべき姿、あるべき農業構造についてのビジョンは?

・平成19年12月12日(自民党小里泰弘議員、民主党小平忠正議員より)
・平成19年12月19日(自民党江藤拓議員、赤澤亮正議員より)
・平成20年5月8日(自民党小里泰弘議員、赤澤亮正議員より)

○農地の規模拡大を志向する農家は増えておらす、農地面積、農業従事者が減っている。経営体の規模拡大を目指した政府の構造展望は絵に描いた餅である。

○民主党は、特定の経営体を育成するのではなく、地域として農地、農業を守ってこうという観点で、農業者戸別所得補償法案を提出した。

○特に中山間地域では、集落の消滅、農業が存続できないという大変な危機的な状況に立っているという意識を持って、農業、農村の振興を図っていくことが必要。

○地域の状況を踏まえながら、望ましい経営体、地域としての経営体、担い手ができるような基盤づくりが大事。

8.品目横断的経営安定対策の評価は?

・平成19年12月12日(社民党菅野哲雄議員より)
・平成19年12月19日(公明党井上義久議員より)

○農産物価格の下落基調にあって農業者、地域としての農業の振興を図るためには一定の直接支払いが必要。品目横断的経営安定対策については、直接支払いを導入した点については評価する。

○転作を進めるためには集団転作が必要だが、集団転作を定着させるためには、今回の品目横断的経営安定対策は有効に効果を発揮している。

○経営規模を入り口段階で限定する選別政策であり、農業従事者が減少する中で、農村の現状を救うことはできない。  

9.戸別所得補償法案における家族経営の位置付けは?

・平成19年12月12日(民主党佐々木隆博議員より)
・平成20年4月8日(民主党佐々木隆博議員より)

○農業は、家族が協力し合ってやる形態が一番いい。生産法人も、一つの農業者の形態として評価していい。

○民主党法案では、特定の経営体、特定の担い手を育成することではなく、家族経営体が集まって、その中での地域農業、農村のあり方を考えて、振興を図っていく。

○意欲を持って取り組む農業者を中心とした家族経営こそがこれからの農業の中心にあるべき。そうした家族経営が集まり、集落が成り立つのが本来の姿である。

○農地の流動化、生産の組織化も実態に即して進めなければならない。今意欲を持って取り組んでいる農業者に一定の所得を確保することで、経営を強化し、全体の底上げを図っていくことが基本である。

10.担い手をどのような方法で育成するのか?

・平成20年4月8日(民主党篠原孝議員より)

○政府の食料・農業・農村基本計画のようにあるべき経営体という姿を数字で示すようなことは、今は必要ない。今一生懸命やっている農家を支え、その中で変化に応じた構造調整を進めていくことが肝要だ。

11.300万トンの備蓄構想は現実的感覚を欠いているのは?

・平成20年5月8日(自民党小里泰弘議員より)

○必要性とコストは大きな問題。方式は、棚上げ方式がいいという認識で一致している。MA(ミニマム・アクセス)米を、備蓄の中にどう位置付けるかは検討中。

12.平成19年度参議院選挙における民主党選挙ビラとの齟齬については?

・平成20年5月8日(自民党赤澤亮正議員、近藤基彦議員より)

○党の政策の核心部分につき、選挙期間中に、多少デフォルメすることは各党共通してみられる。評価の問題。その是非は、各党が判断すべき。

○民主党として当該ビラつき、総括したという経緯はない。党の中で分裂しているとう状況もない。