農業の再生に向けて
 ― 農業者戸別所得補償法案の審議経過 ―

農業者戸別所得補償法案(以下「戸別所得法案」という。)は、平成19年の参議院選挙の際に掲げた民主党マニフェストの具体化として、先の臨時国会(第168回国会)において参議院に提出されました。

私がその法案作成のまとめ役を任されました。

 米、麦、大豆などのいわゆる土地利用型作物の生産にかかる費用(生産費)と農家の販売価格に差がある一方、その差を補填する制度が十分でないことが、自給率の低下、農地の減少、農村の疲弊、地域経済の低迷につながっているとの認識のもと、戸別所得法案は、作物毎にその差額を国が一定の考え方で補填する制度提案を行ったものです。

一般的には直接支払い制度といわれており、欧米では早くから導入されている制度です。

国内の農業を安い外国農産物との競争で負けないようにするためには、二つの方法があります。

 一つは輸入農産物の高い関税をかけ、輸入価格を高くすることです。わが国の米は、この方法によって守られています(ただし、ミニマムアクセス米といって毎年一定量の輸入が義務づけられ、その多くは加工や援助米として利用されています。)。しかし、この結果、当該農産物にかかる国内価格は、外国産に比較して高くなります。消費者がその価格で農産物を購入することで農家の収入が確保され、農業が守られることになります。

 もう一つは、農家に対し生産費と販売価格との差を補填する直接支払いをすることです。この場合、輸入農産物に対しての関税は、低く設定するか、廃止(自由化)することになります。この結果、国内農産物価格は国際価格に連動して決まるため安くなります。国内農家も消費者に対し安く農産物を提供することになります。しかし、そのままでは、農家はやっていけませんから、直接支払いによって一定の所得が確保されます。その財源は、国民(消費者)が支払う税金です。

 貿易の自由化が世界の大きな潮流となっている中、農産物についても「関税から直接支払い」というのが、大きな流れになっています。しかし、こうした中にあって、日本の対応は中途半端でした。麦、大豆などをはじめとして自由化だけは進めてきたのですが、国内生産をまもる政策については、極めて不十分な対応しかしてこなかったのです。

 その結果が現在の農業の姿です。

EUでも米国においても、農業と農村を守るため、巨額の補助金が直接支払うという形で使われています。農産物の関税を下げるかたわら、この直接支払い制度によって農家の収入を確保してきたのです。

わが国農業の流れを大きく変えたい、変えなければならない時期にきている。

そういう思いで、国会に提出したのが「戸別所得法案」です。

 国会では、参議院で15時間の委員会審議の末、可決、与党が3分の2以上を占める衆議院では臨時国会、通常国会と二つの国会をまたいで15時間の審議を経て否決となりました。議員提出法案としては異例な長時間審議となり、委員会では与野党間の激しい論争が展開されました。

 残念ながら、法案は成立させることができませんでした。しかし、法案の提出、審議を通し、世界的な穀物価格の高騰、その一方での国内米価の下落、といった食糧をめぐる国内外の異常事態に直面する中、「危機」といっていい状況に瀕したわが国農業、農村の現状、鳴り物入りで導入された政府の「品目横断的経営安定対策」の実態との大きな乖離などが明らかになりました。また、自給率の向上、農業再生への本格的な国民的議論がスタートする端緒になったと思っています。

 これから、生産者、消費者を問わずこの議論をもっともっと活発化していかなければなりません。そして、その議論の先の「農業政策として何をしなければならないのか」という問いに対する答えとして、まずは「戸別所得法案」の基本的考え方があると確信しております。


「農業者戸別所得補償法案の国会での主な論点

「農業者戸別所得補償法案をめぐる主な新聞記事」

<農政本格論戦へ>

<民主党にも農林族>

<与野党 対論>

<農業所得補償で論戦>

<農家支援かバラマキか>

<補償の中身なお不明>

<どうなる農政>

<農業者所得補償>

<自・民互いに成果強調>

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