三位一体改革の実態と今後の改革の方向性

 三年間に渡った三位一体改革。補助金の改革、それを財源とした国から地方への税源委譲、地方交付税の見直し、を「三位一体改革」と政府は言ってきました。

 三位一体改革は政府の歳出抑制の一環、地方分権という建前に地方は安易に乗ってはならない、と繰り返し私は警告してきました。

 結果は、残念ながら私の警告した通りになりました。補助金改革、税源移譲は中途半端。地方交付税の圧縮だけは粛々と進められました。

 地方財政をめぐる情勢は、引き続き、国の財政再建問題と密接に絡んで大変厳しい状況にあります。


■羊頭狗肉であった補助金改革、税源移譲

 三位一体改革についての政府の基本方針を示したのは「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太の方針)」(平成15年6月閣議決定)です。

 ここでは補助金については「廃止、縮減等の改革を行う」、税源委譲については「廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものについて税源委譲する」、「義務的な事業については徹底的な効率化を図った上でその所要の全額を委譲する」と明確に定められています。

 要は、地方に任せられる補助事業は廃止し、それを財源として国から地方へと税源委譲をするというものです。

 ところが、実際には、補助金改革、税源委譲はまったく別の形で行われました。まず、補助金改革では、削減総額4兆円の内、約1.8兆円を補助率の引き下げによって捻出しました。補助率の引き下げは、国の事業に対する権限は変えずに国と地方の負担割合だけを変える、というものです。地方にとっては負担だけが増えることになります。補助事業の廃止によって、権限が奪われることを恐れた各省庁の抵抗との妥協の産物です。霞ヶ関の論理が先行し、三位一体改革の基本理念など完全に吹っ飛んでいます。

 税源委譲は総額3兆円。給料から毎月天引きされる所得税(国税)、住民税(地方税)の負担割合の見直しによって実施されます。国の財源を直接、地方財源に切り替えることは画期的です。これまでできなかった措置が実効されたことは評価しなければならない点です。

 しかし、その財源の相当部分は補助率の引き下げによって生み出されています。「廃止する補助金の中から必要なものを税源移譲する」との当初の考え方とは明らかに異なっています。
地方にとってみれば税源移譲によって住民税収入が増えますから形式上は自主財源が増えます。しかし、その増えた自主財源のかなりの部分は、義務教育費などの国の補助率の引き下げ分に充当しなければならない。

 つまり自主財源が「自主財源」でないということです。
見せかけの補助金改革、税源移譲、実態の伴わない数字合わせの改革と揶揄される所以です。まさに、羊頭狗肉の改革であります。


■委員会での私の指摘事項には、一応の対応策が講じられた

 税源移譲に関連し予算委員会などで、私は二つの問題点を指摘してきました。

 一つは税源移譲に伴い1兆円交付税が減る問題、一つは、税源が都市部に偏在する問題です。いずれも、充分ではありませんが、対応策が講じられました。

 税源移譲は所得税の1部を住民税に切り替えることで実行されます。地方交付税は法定5税の一定割合が充当されます。その法定5税には所得税の32%が入っていますので、3兆円の税源移譲をする(所得税が3兆円減り、住民税が同額増える)と、地方交付税は1兆円減額となります。この分について特別の手当をすべきとの主張を私は国会論戦で展開しました。これについては、委員会での指摘を受け、総務省も財務省と激しくやりやったようで、平成19年度から、三年間交付税総額に6千億円を加算することで一応妥結しました。

 住民税による税源移譲は人口が多い大都市が有利で税源の偏在が起こる、との指摘も続けてきました。詳しい説明は割愛しますが、これについては、法人住民税の配分割り当ての見直しという「裏技」を使って、不交付団体と交付団体間の税源偏在の問題を解決しました。総務省も知恵を出したようです。


■大幅な削減がされた地方交付税総額

 歳出を圧縮したい国にとって地方交付税をどうするかは、最大の関心事でした。国の一般歳出の中(80兆円)で、社会保障費(20兆円)、国債費(18兆円)と地方交付税(14兆円)で3分の2を占めます。高齢化社会の進展にともない社会保障費は過去8年間で4.5兆円増加。今後も増え続ける見込みです。国債費は発行残高の増加とともに増えます。今は低金利ですが、今後金利が上昇すればさらに増えます。こうした中、歳出の圧縮圧力は交付税にかかってきます。

 交付税の総額は、総務省と財務省が毎年協議して作成する地方財政計画によって決まります。当該年度の地方財政の標準的歳出を全国規模で定め、そこから地方税収入、国庫補助金、地方債収入などを引いた残額が、交付必要額となります。

 地方交付税は所得税、法人税などの国税(法定5税)の一定割合が財源となります。しかし、これだけで交付必要額に満たない場合には、その差額分を特別な地方債の発行や、国の一般会計からの特例加算によって充当してきました。

 特例加算はもっとも多いときで5.5兆円(平成15年度)ありました。歳出削減を迫られる財務省にとって、この特例加算の削減は至上命題であったに違いありません。現にこの一般歳出は、三位一体改革の3年間の期間の間に一気に0.7兆円にまで圧縮されます。地方税収の伸びなどの要素も勘案しなければなりませんが、各自治体の財政は急激な縮減を迫られることになりました。
 
 うがった見方かもしれませんが、私には三位一体の本当のねらいはこの特例加算の廃止にあったのではないかと思っています。それだけでは総務省がもたないので、補助金改革、国から地方への税源移譲を取り込み三位一体とした、といった「策謀」があったのでは、との推測も出てきます。もちろん政府が「策謀」の存在など認めるわけはありません。しかし、補助金改革、税源移譲がいわば「いい加減」に行われた一方、交付税の縮減だけはきっちりと進められたことだけは事実です。

 地方交付税圧縮は、ポスト三位一体改革でも大きな動きになっています。

 景気の回復に伴い、税収の伸びが期待されます。国税収入の伸びは、地方交付税の増につながります。そこで、総額抑制の観点から、地方交付税総額を一定額に押さえ込むことを財政当局はもくろんでいます。来年は参議院選挙があり政府は明言を避けていますが、底流にはそういう流れがあります。


■では、地方交付税はどうするか

 地方交付税は地方の独自財源といわれています。しかし、その総額は、毎年財務省と総務省との協議によって策定される地方財政計画によって決められてきました。これは、法定5税だけによって決まる交付税総額では、十分な地方財政収入が確保できない、との理由によるものです。

 しかし、これでは各自治体が、交付税総額は翌年度いくらになるか、の予想も立てられず、自主財源といいながら、毎年、国の裁量によってその総額が決められることになります。国の財政再建が重要課題になっている今日、このシステムでは、将来に対する交付税の見通しはいっそう不透明なものになります。

 そこで、わたくしはこれまで国会の場で、何度も次のような主張をしてきました。

・ 地方交付税の総額は国の税収の一定割合とする。
・ これを5年間ごとに見直す。
・ 地方財政計画は廃止する。
・ 交付税の各自治体への配分は、簡素でわかりやすい方式とする。

 この考え方の要点は、交付税総額を裁量的に決めるのではなく、自動的に決まってくるシステムにすることです。こうすることで、各自治体も交付税総額の見通しも立てやすくなり、中期的な観点にたっての財政運営もやりやすくなります。

 ちなみに、この考え方は、今年に入り、地方六団体の国への要望事項としても取り込まれ、今後の地方交付税総額決定方式見直しの、地方側の案として位置づけられることになりました。


■国は、説明責任を、地方は、財政的に今までみたいに国に頼らない覚悟を

 三位一体改革の最大の問題点は、政府がその本質を明確に地方に示さず、三位一体改革によって各自治体の財政運営がやりやすくなる、との“誤解”を与えてしまったことです。三位一体改革は、地方交付税縮減など地方にとっても痛みが伴うことを国ははっきりと言うべきでした。

 地方財政改革や地方分権は、地方を一体として捉えて議論することが多いようです。自治体全体を指して地方と言っていますが、その実体があるわけではありません。各自治体は独立してあるからです。しかも、自治体間には財政力、人口構成、産業構成などにおいて大きな違いがあります。

 地方分権や地方財政改革は自治体によってその影響は異なってきます。概して、地方財政改革は財政力の強い自治体ほど受ける便益は大きく、財政力の弱い自治体ほど逆になります。国は、地方をひとまとめにして議論することを止め、自治体間の格差に十分に配慮した説明をすべきです。

 また、自治体も国に対し、ただ地方交付税を確保しろ、税源移譲をしろ、といった主張だけをして展開すればいいという状況ではありません。財政面において国に依存できる範囲は、今後ますます限定される、と考えるべきです。地方にとっては、つらい状況といえば辛い状況です。しかし、地方の創意工夫、努力が試される、見方を変えれば本当の地方自治が始まる端緒にもなります。

 地方自治は今、覚悟と決意が求められています。

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