―三位一体改革で拡大した自治体間の財政力格差(地方財源の偏在)拡大の是正は継承しなければならない―

 

                                                by 参議院議員 平野達男

 

要旨

三位一体改革によって生じた、自治体間の財政力格差(税源の偏在)の拡大への是正措置は、形は変わってもきちんと継承しなければならない。消費税率8%にともなう地方法人課税の見直しでは、この点があやふやになっている。次の見直しでの明確な対応は、政府の責務である。

 

 

三位一体改革と自治体間の財力格差(税源偏在)の拡大

三位一体改革は、2004年から2006年の間に、小泉内閣の下で行われた。その本質は、国庫補助金と地方交付税の削減による国の財政再建、それとセットになった国からの地方への税源移譲による地方分権の推進である。国庫補助金と地方交付税の削減あわせて約9兆円(臨時財政対策債含む)、税源移譲として約3兆円。国による、地方を巻き込んでの大胆な財政改革、歳出改革でもあった。

当初、三位一体改革には、ほとんどの自治体が、その財政に大きなメリットがあることを期待した。岩手県の各自治体からも「三位一体改革を推進」という要望が次々寄せられ、困惑してしまったことを覚えている。総務省は、自治体の立場に立った説明をすることはなく、一見、複雑に見える地方財政制度が障害になったのか、国会において三位一体改革の実体を追求する議員も少なかった。

しかし、三位一体改革の実際の姿が明らかになると、ほとんどの自治体は、期待から失望に変わる。困難な歳出削減を迫られることになったからだ。

 

三位一体改革は、地方自治体を1つの集合体と捉えて行った、国と地方との財政調整とみることができる。しかし、地方自治体間の財政力には大きな開きがある。これを、地方交付税の交付団体、不交付団体の二つに分け、それぞれの視点で三位一体改革をながめると、もう一つの姿が浮かび上がってくるのである。(図表−1上段

言うまでもなく、交付団体はその財源の一部として地方交付税に依存する団体をいう。不交付団体は、地方交付税に依存する必要のない、独自の財源が豊かな自治体である。全国のほとんどの自治体は交付団体であり、不交付団体の数は少ないが、東京都は後者の代表だ。

三位一体改革の柱の一つである地方交付税の削減が、不交付団体に影響を及ぼすことはない。交付税配分の基礎となる基準財政収入額、それと連動した基準財政需要額の縮減によって交付団体だけが財政調整を迫られる。

国庫補助金の削減も、地方交付税とあわせ、補助金への依存度が強い自治体ほどその影響は大きいとみる必要がある。

「地方分権」の象徴とされたのが税源移譲。所得によって累進的に設定されていた個人住民税を、所得税・個人住民税合わせた税率構造を変えずに、10%にフラット化することで、トータルとして3兆円の税源移譲がおこなわれた。これ自体は、画期的なことであった。

補助金、地方交付税などの削減の影響を大きく受ける交付団体に、国からの税源移譲がおこなわれることは誰もが納得する。しかし、その影響をあまり受けない不交付団体にも、同じ考え方で税源移譲を行うことに対し、筆者を含め少なからぬ人が違和感を持ったことも事実である。制度上は公平に扱うべきであることは、充分承知をしつつも・・・。

しかも、個人住民税の偏在性が、さらにこの問題を大きくした。

総務省による2012年度の決算額による一人あたりの個人住民税は、全国を100とした場合、東京都は159.7、最低の沖縄県との比率は2.7倍となっている。これに、人口の要素が加わり、税収額は大きく開く。つまり、税源移譲は、全体としては、経済活動が集中し、人口も多い不交付団体に厚く行われることになるのである。

 

「三位一体改革は財政力の弱い自治体をさらに弱らせ、財政力のある自治体(不交付団体)の財政力をより強化する政策だ。」

筆者が、当時、予算委員会で繰り返し叫んだことだ。若干の誤解はあるが、三位一体改革の重要な側面を突いていたと思う。

 

税源偏在の是正措置の導入(地方法人特別税・譲与税制度の導入)

三位一体改革終了の翌年度、2007年度に、政府は地方法人特別税・譲与制度を導入した。税源の偏在是正を目的としたもので、その背景には、三位一体改革によって拡大した自治体間の財政力格差がある。

都道府県の税収である法人事業税のうち2.6兆円(制度創設時。地方消費税1%相当とした)を、人口、従業者数で不交付団体を含め都道府県に再配分するというものである。これによって、当初の想定では、不交付団体は、差し引き約4,000億円の財源を拠出し、交付団体にその分が上乗せされることになった。財政力の豊かな自治体から、財政力の弱い自治体への財源の再配分は水平的調整と呼ばれる。地方交付税制度が、国から地方への財源の再配分であり、これを垂直的配分と呼んでいることに対応したものといわれている。

,000億円の財源は、税源移譲によって東京都を始めとした都県の不交付団体の財源増となると当初想定された4,500億円の9割近くになる。リーマンショックの影響によって税収自体が落ち込み、当初の想定通りの再配分は行われていないが、少なくとも、かなりの規模での自治体間での水平的調整を意図したことは明確である。(図表−1下段図表−2

三位一体改革がもたらした、自治体間の財政力格差拡大への是正措置導入は当然である。しかし、その実現には、不交付団体からは大変な反発もあったと想定され、簡単ではなかったはずである。総務省は大変だったと思う。

なお、この措置は、都道府県のみが対象となり市区町村は対象となっていない。また、本措置は「税制の抜本的な改革において偏在性の小さな地方税体系の構築が行われるまでの措置」と位置づけられた。地方消費税の充実を基本とした税源交換を主張していた総務省と、国の財源確保を優先させなければならない財務省とのやりとりの結果であった。

 

地方消費税増収と地方法人課税の見直し

消費税の税率が4月1日より、5%から8%になった。国の財政が多額の借金を抱え、その一方で、国、地方の社会保障関係予算が年々膨らむ中での安定的な財源の確保は、必要不可欠である。将来世代のことを考えればなおさらだ。

ところで、消費税は、その一部は地方消費税(1%→1.7%)、地方交付税(1.18%→1.40%)となる。この、地方消費税の税率引き上げに伴い、ここでも税源偏在、交付団体と不交付団体との財政力格差の是正が課題となった。(図表−5

そこで、導入されたのが、地方法人課税の見直しである。法人住民税法人税割の国税化として、消費税8%段階では、都道府県分、市区町村分の一定部分(それぞれ5.0%→3.2%、12.3%→9.7%)を国税化し、これを地方交付税特別会計に繰り入れ地方交付税の財源とするものである。その総額は、約5,800億円と見積もられた。そのうち約1,900億円(都道府県分約1,100億円、市区町村分約700億円)が不交付団体の減収によって生み出された。地方交付税となるため、不交付団体に再配分されることはない。地方財政における水平的調整の新たな形が示されたといえる。(図表−3図表−4

この措置とあわせ、実施が決まったのが、三位一体改革終了の翌年度に税源偏在の是正措置として導入された地方法人特別税・譲与税の規模の3分の1縮小である。地方法人特別税・譲与制度は、既述のように暫定的な措置として導入された。3分の1縮減措置は、この暫定措置からの脱却に向けた措置と位置づけられる。

一見、これで了解ということになろう。が、どこかおかしいのである。

 

あやふやになった三位一体改革に対応した是正措置

暫定的という意味は、手段が暫定的、ということであって、三位一体改革で拡大された税源の偏在への是正措置は、形は変わっても継続される、と考えるのが当然である。

地方法人特別税・譲与税の規模見直し(3分の1縮小)は、税源偏在措置の縮小を意味する。簡単な試算によれば、交付団体の税収入は約700億円の減収となり、それはそのまま不交付団体の増収となる。本来であれば、税源偏在措置縮小にともなう代償措置が必要であろう。そして、その措置は明確になっていなければならない。

しかし、この点に関する説明は、総務省資料にも財務省資料にもない。地方消費税増収に伴う地方法人課税の見直し(法人住民税法人税割りの国税化(地方交付税化))についての記述は、具体的にあるが、地方法人特別税・譲与税の縮減についての具体的記述は少ない。ただ、3分の1縮減の事実のみが伝えられているだけである。地方法人税法の改正案(すでに成立)の説明資料の最後に、3分の1縮減の数値表を「参考」として、掲げられているだけのものもある。

順番が逆であろう。

地方法人特別税・譲与税の縮減、あるいは廃止を行うのであれば、その趣旨を明確にし、さらにその代償措置を明示することは少なくとも財務省、総務省の責務である。その上で、地方消費税増収に伴う財政調整措置をどうするかという議論、説明にしなければならないはずである。今回の地方法人課税の見直しでは、この点があやふやになってしまっていることは、誠に不可思議というほかない。

 

真摯な対応を!

 消費税率の引き上げは、当面10%までが予定されている。(図表―6

政府は、その時期の決断を、まず、年内にしなければならない。もし、引き上げが決まれば、それと合わせ、3分の2が残った地方法人特別税・譲与税をどうするか議論されるはずである。もし、廃止ということであれば、次は、その代償措置をきちんと明示しなければならない。三位一体改革による財源偏在の是正措置は、確実に継承されなければならないのである。

 地方の意見も十分聞きつつ、政府内における建設的な議論と、真摯な対応を望みたい。